桃岩荘の朝は早い。
世の中には美味しいものや高級なものがいろいろあるけど、石浜で波が引くときの「コロコロコロ……」という小石が転がる音を聞きながら食べるシャウエッセンは最高に美味いんですよね。
6時。突然、音質が割れまくりの「石狩挽歌」が流れて起床時間。
荷物を整理し、シーツを返却するとラジオ体操の時間。
朝から大声でラジオ体操の歌を歌い、わりと本気で体を動かす。
そうこうしているうちに、始発のフェリーに乗る人が出発の時間になり入り口前に集合して見送りの儀式が始まる。
出発する人が歩き始めると、みんなで送り出しの歌を歌う。
歌の合間に「いってらっしゃーい!」「また来いよー!」と大声をかけ、出発する人も振り返って「行ってきまーす!」「また来るぞー!」と叫んでいる。
全然話したこともない人たちだし、普段こういうことを冷めている自分も、なんだか旅立ちのシーンに胸が苦しくなる。
出発した人がカーブを曲がって見えなくなっても声を出し続け、見送りの儀式、終了。
身の回りを確認して荷物をフェリーターミナルまで届けてもらう段取りをし、本日のトレッキングに出発。
桃岩荘を出発し、トンネルを抜けて桃岩展望台、灯台、北のカナリアパーク、フェリーターミナルまでの10キロコース。
桃岩荘に泊まった人でこのコースを歩く人はいなかったので、ひたすら一人で登る。
桃岩展望台までの直登で汗びっしょりになったけど、稜線に出ると海からの風が異常に気持ちいい!
灯台から降り、礼文の漁師町を歩く。
朝にシャウエッセンを食べただけなので腹が減って足が前に出ない。何度もタクシーを呼ぼうか迷いながらも、ほぼ限界で北のカナリアパークにたどり着き、ポカリを飲む。
最高に美味いし、なんだか力がわいてきたーーー!
ということで無事10キロ完走。
フェリー乗船の時間が近づいた頃、桃岩荘ワゴンが到着し荷物を受け取る。
ヘルパーさんに「桃岩荘どうでした?」と聞かれたので、「最高でした!昨日はアニソンメドレーを全然踊れなかったので、絶対また来ます!」と答えて握手。
リュックを背負い、一人でフェリーターミナルに向かってヨロヨロ歩いていると、背後から「行ってらっしゃーい!」と旗を振って大声で叫んでいる。周りには自分しかいない。
あの二人は自分に向かって叫んでくれているんだ。
と気づき、振り返って二人に向かって「行ってきまーす!」「また来るぞーーー!」と叫んで、これまでの人生、55年で振った事が無いくらいのイキオイで全力で手を振った。
桃岩荘って、今の時代に冷めた目で見ると、建物は古くて快適でもないし、食べ物も自炊。 寝床は押し入れのような場所にペラペラの布団を敷いて寝る感じで、宿泊施設としては全然良くない。
次は何年後に行こうかな。